リモートワークと海外留学

- 海外大学のリモートワークってどう?
- リモートワークでも留学できる?
- リモートワークで留学は変わった?
こんな悩みを解決します。
“リモートワーク”。
半年前まで聴きなれなかった言葉ですが、今では生活の中での日常風景になりつつあります。国内でも多くの大学がリモート授業を行うなか、海外の大学でも同じようにオンライン授業が実施されています。
ケンブリッジ大学などの一部イギリスの大学はコロナ流行下で早々に、来年度(2021年)以降もオンラインで授業を行う事を明言しています。
そもそも、時差と距離の壁を越えるという観点から見ると、海外の大学へ留学する学生の方がリモートワークによる恩恵を受けている、とも言いえます。
しかし実際にはリモートへの移行によって生じた課題もたくさん残っています。
今回は、筆者がリモート留学を体験して感じた実際にあった変化とその影響、そして導入から1年が経ちどのよに変化しているのか、現役学生へのインタビューを基にお伝えします。
- リモートワークによる変化
- 授業の変化
- 試験の変化
- 大学のイベントに参加できない
- リモートワーク留学のメリット
- 距離を越える
- ミーティングが容易
- 授業の理解度が上がる
- リモートワーク留学のデメリット
- 学術的な学びに限られる
- 質問機会が減る
- 大学の対応は後手
- 高額な学費に疑問
リモートワークによる留学スタイルの変化

最初にリモートワークによる変化、「留学中の学習面・生活面はどう変わったのか?」についてお伝えします。
これまでの留学では、現地に行って実際に対面で授業を受けることが一般的でしたので、リモート授業は180度の方向転換とも言える、大きな変化でした。
授業形態の変化
まずは、ライブ授業が減ったことにより、授業はそれぞれの都合の良い時間帯で受けるようになりました。その為、基本的には録画された授業を見ます。
ただし、実習系や授業の内容によっては、ライブでの授業が必修です。その場合はzoomなどを通して、日本時間の夕方以降に作業しました(イギリスの場合)。
1年間が経過した現状を見ると、この変化に関しては学部や大学の方針で大きく左右されるようです。ただし、コロナ直後と比べるとリアルタイムでの授業に戻した大学が増えています。

アメリカの大学は、イギリス以上にディスカッション授業が多い為、ライブ授業が今でも多い印象を受けます。
試験内容の変更
次に、試験がオンラインになりました。
通常であれば、クラスに集まって試験を受けますが、筆者の場合はオンラインでの課題の提出が主でした。課題の形式に関しても:
- レポートなどの時間をかけて行うもの
- 問題発表から24時間以内に提出
など、様々な工夫が取られていました。2つ目の24時間以内の提出に関しては、対面の試験(通常2〜3時間)と課題の中間のようで、ショートエッセイのようなものでした。
なお、24時間という時間指定は、母国に帰っている生徒の為に時差を考慮したものです。
試験や課題の内容が難しくなったとは、少なくとも筆者自身は感じませんでした。
ですが対面授業がなくなった事で、試験や課題の質問を教授へ気軽に聞くチャンスが減りました。この事から、もやもやした疑問を抱えて臨んだ感じになりました。
もちろん、質問はオンラインでもできますが、「ちょと気になる」くらいの小さな疑問を聞く環境には適さないと感じています。
またオンラインの特性上、学生側にとっては調べ物をしながらのテスト受講が可能な「カンニングし放題」な状態となるので、当然ですが問題はその前提で作られていました。
大学のイベントに参加できない
オンライン(リモート)の留学では、対面形式のイベントには参加できませんでした。このマイナス点は非常に大きかったです。
大学には授業以外の様々なイベントが存在しますが、現在はコロナウイルスの影響によって対面によるものは全て中止になっていました。クラブ活動なども活動自粛を求められ、その他生徒主催のイベントも中止や延期となっています。
再開時期に関しては、大学の方針とクラブの考えの2つを尊重しながら、協議を行なっているようです!
この問題の本質は直接的な接点が大きく減る事なので、コロナのみならずオンライン全般の課題でもあります。
イベントは新入生にとっては大学や同級生との大切な接点であり、最初に友達を作る貴重な機会です。留学を謳歌する為にも、授業外での人との交流はとても重要なトピックだと思います。
今後リモートで留学する学生が増えてくると、学生同士の繋がりやプライベートの充実をどのようにサポートしていくのか、という点が重要な課題になりそうです。

現在留学中の学生に関しては、コロナ前から状況が急激に変わった事もあり、戸惑いも大きいと思います。。。
現状でも参加可能なものには、積極的に参加したいですね!
コロナ下の状況で、筆者から一つアドバイスさせて頂くと、中止のイベントが圧倒的に多いので、今後開催されるイベントは逆に大々的に宣伝されています。それらのイベントには、可能な限り参加する事をオススメします。
リモートワーク留学のメリット

コロナウイルスの影響により予期せぬ形でのリモートワークとなった学生も多くいますが、もともとオンラインでの留学というスタイルは存在しています。
日本国内に居ながら海外の大学に通える、というのは皆さんが想像しているよりはるかに楽です。社会人の方など、移動する事が難しい方や時間の制約が多い方には、特に適している方法ではないでしょうか?
今回は留学に関連の深い3つのメリットに絞ってお話しします。
距離を越える
やはり一番の利点は「移動せずとも、講義を受けられる」という点でしょう。
もともと、海外の大学では一部の講義を録画・録音して、対象学部の学生に向けて配信している大学も少なくなく、リモートワーク用の授業へのを対応も比較的早かったように感じます。
今回インタビューを行った生徒の通う大学では、授業の大まかな内容が纏まったスライドを先に配布し、時間割の時間で録画されたビデオが公開されたそうです。
家とキャンパス間での移動がなくなる事や、時間の拘束がなくなるなどたくさんのメリットがありました。実際にオンライン授業の期間は、時間にゆとりのあり、非常に快適な生活だったと感じています。
ただしこれは一般の講義に限った話で、教室に行く必要の高い実習やその他の授業に対する影響は確実にありました。これら好ましくない影響については、後ほどお話ししていきます。

対面で行うことで、初めて理解できる内容もたくさんありますよね。
現状の授業のフォーマットでは、全てをオンラインで完結というのは難しいです。
ミーティングが容易になる
オンラインに場所が移った事で、ミーティング開催が非常に簡単になりました。
海外の大学はディスカッションが多いイメージがあると思いますが、日本国内の大学と比べると実際にディスカッションベースの授業はかなり多いです。
話し合いや共同ワークなど、生徒参加型の講義スタイルですね!
課題の中にはグループワークなどの、メンバーと話し合って一つの課題に共同で取り組むタイプのものも多くあります。グループワークを行う上では、共通認識を常に持つためにも、お互いの進歩状況を確認するためにも、ミーティングが欠かせません。
ただし、キャンパスで生活していると、登校の時間や講義の時間帯がメンバーそれぞれで違うことで、全員の時間を調整することが意外と難しいです。

大学は講義以外にもバイトや私生活もあって、意外と忙しいですよね!
加えて大学の課題は仕事ほどの拘束力や強制力はありませんし、悪い言い方をすると手抜きをするメンバーもいます。
オンラインでのミーティングはその点、隙間時間でもネット環境が整えば参加できるので、多くの人にとってアクセスが容易で手頃なツールです。
実際に筆者の経験でも、ミーティングの頻度が上がりました。また手軽に開催できるため、普段だと後回しにしがちな細かい点まで話し合えました。
授業の理解度が上がる
筆者の大学はライブ授業ではなく、時差を考慮して極力録画による授業を推奨していました。その他のイギリスの大学でも、録画の授業が多いようです。
2021年の現在では、ライブ配信を行ったものを録画し、後ほどアップロードするというスタイルも人気のようです。
イギリスの大学は、全生徒の半数近くが留学生という学校も珍しくありません。
今回のコロナウイルス騒動でも、留学生への配慮をたくさんの場面で感じました。
録画の利点は、同じパートを何度も繰り返し聞ける点や、一旦ポーズして頭を整理する”一休み”の時間を自ら取れる点などがあります。
他にも、大学の動画設備によっては、再生速度を調整できるので、重要なパートはゆっくり聞いたり、雑談は1.5倍速で聞いたりできるようです。また、字幕をつけている大学もあります。

英語に不慣れな留学生にとっては、オンライン授業の補助ツールの多さは大きな魅力です!!!
個人的には、講義を聞くことによる習熟度は、オンライン講義の方が上なのでは、と思ってしまうほど、使い勝手がよかったです。
この3つに限らず、全体的に「作業の効率化」という点でリモートワークの恩恵を受けた印象です。
アメリカやイギリスなどの大学は、学生の約半数が外国からの留学生という大学も少なくないので、リモートワークで質の高い授業を届けることが出来るのであれば、大学側にとっては今後の一つの選択肢になるかもしれません。
リモートワーク留学のデメリット

ここまではリモートワークによる良い変化についてお話しをしました。ここからは、気になっている方も多いであろう「リモートワーク留学のデメリット」に焦点を当てていきます。
リモート留学では人との出会いが難しい
留学を通して学べる内容は、授業から得るものだけではありません。
異国の地で生活し、様々な背景を持つ生徒たちと交流することで、自身の知見を大きく広げてくれます。帰国後もプライベートや仕事で支え合える、良き仲間との出会いもあります。
つまり、「実際に異国の地で、異国の人と交流する」ということも留学の大きなポイントです。
しかし、オンラインの授業では生徒同士の交流機会がかなり限られます。筆者の四ヶ月のオンラインワーク生活では、グループワークくらいしか生徒間の交流はありませんでした。
筆者の友人は、イギリスの文化に憧れてイギリス留学を決意したそうです。
オンラインでの留学になると、籍はイギリスの大学にありますが、それ以外での接点は0。文化を感じる機会は減りますよね。。。
この課題は現状でも解決策が見つかっていない、重要な課題であるようです。ある程度外出はできるようになりましたが、国ごとで状況も異なります。
オンラインで授業を提供する体制が仮に整ったとしても、「人と出会う」という課題の解決にはまだ時間がかかりそうです。やはり実際に現地やイベントに足を運ぶ以外の方法は無いのかもしれません。
質問機会がかなり減る
オンラインの授業では、教授に対しての質問機会がかなり限られます。過去四ヶ月の生活から具体的に例を出すと、ライブ授業直後、別途の質問会の2つの機会しかありませんでした。

比べて対面だと、授業の合間の休憩時間や終了直後、教授の部屋を訪ねる事もできるので、質問する機会は多かったです!
メールやチャットでの質問も可能ですが、どうしても返信を受け取るまでに時間がかかるので、対面でその場で聞くほどの吸収は難しいです。
オンラインで質問すると言っても、実際の手間は「画面を開いて言葉を打ち込む」という1つの小さなものだけです。
しかし蓋を開けてみると、1つの手間が増えるだけで質問回数は減少。あくまで個人の体験ですが、こんなにも質問回数が減るのかと驚きました。
またライブ授業後の質問タイムは、クラス全員が残った状態で質問を行います。個人の課題に関することなど、パーソナルな質問をする事が少し難しかったです。
大学の対応は後手に回りがち
今回のリモートワーク導入は、コロナウイルスの影響による、大学側も予期せぬ事態ではありました。
ですので、リモートワークへの対応は今後の課題である事を念頭に置きつつも、現在の状況として、各大学のリモートワークへの対応はどうしても後手に回っている印象です。
具体的には既存の試験や課題の内容などは、対面での授業で教える事を想定して、作られたものが多いです。オンラインに移行した途端に、不自然でやり辛いものになります。
例えば、オンラインと対面ではプレゼンの構成が変わってきます。他にも、実験などの体験型授業の実施はかなり制約がつきます。

大学は様々な策を講じてくれましたが、全てが円滑に行われたとは言い切れません。どうしても、不便を感じてしまいます。
今後リモートワークを実装して、コロナウイルスと共生する為にも、大学は講義の届け方などの根本のカリキュラムから見直す必要があります。
高額な学費に疑問
イギリスの大学は、自国の生徒と外国籍の生徒で学費が倍近く違います。アメリカの大学は、イギリス以上に学費が高いです。
そもそも留学はお金がかかるイメージがあると思いますが、先進国への留学では生活費と学費を合わせて年間400~500万円くらいは必要です。しかしオンライン留学では学術面以外での学びは期待できない、というのが現状です。
留学に求めるものは個人によって様々なものがあると思います。個人的には学費は、
学術的な学び + 文化的な学び + 人脈形成
への対価というイメージでした。その中で、留学中の文化面や人脈形成での成果が期待できないとなると、非常に残念でなりません。
もちろん、オンラインのみの留学や交換留学では、留学中にかかる学費と生活費が大幅に安くなるので、上記の金額ほど高くはなりません。
それでも、留学には国内の大学進学以上にお金が必要な事も事実です。高額な学費も踏まえて、留学の意味をもう一度考え直す機会を投げかけられている気がします。
リモートワークのデメリットは全体的に、留学の意味をもう一度問いかけてくるような、深刻な問題が多いです。
Foreign policy という海外ニュースの記事では、Curriculum (カリキュラム), Communication (コミュニケーション), Costs (コスト), Careers (キャリア), Community (コミュニティ)の観点から今後の大学のあり方に関しての、重要な要素を指摘しています。
実際に筆者が感じた点との共通点も多く、やはり重要な課題であると思います。
まとめ
この記事では、リモートワークによる留学についてお話ししてきました。
今回の騒動後に書いた記事ですので、全体的にコロナウイルスによる影響を多く受けている点はご容赦下さい。
正直に言うと、リモートワークへの移行は戸惑いも多く、やはり現地で大学に通いたいのが本音です。
しかしこれを機に、一部リモートワークで実施される授業がないとも言い切れません。前述の通り、海外の大学の一部は元より録画による授業の配信を行ったりしています。
もしかしたら、今後の留学は今までの留学とは違ったものを求めて行うものになるかもしれません。

留学で何を学ぶのか、この問いに対する自分なりの答えを持つことが大切だと思います!!
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